本日付けの日経新聞に「京都市、駐車場設置基準を緩和 大型施設など誘致へ」の記事がありました。
京都市は20日、中心部のにぎわいを戻すため、建物を新築・増築する際に義務付けている駐車場設置基準を大幅に緩和する方針を決めた。来春の市議会に駐車場条例改正案を提出する。商業施設やオフィスビルを開発する事業者の負担を軽くし、市内への誘致を進める狙い。マイカーなどの流入を抑えるため公共交通機関の利用も促す。
条例案によると、駐車場の設置を義務付ける台数を商業施設で35%程度、オフィスで40%程度、工場で50%程度、それぞれ引き下げる。延べ面積1万平方メートルのホテルを新築する場合、現行は「44台以上」の駐車スペースの確保が必要だが、新基準では「27台以上」に緩和される。
建物から離れた場所を駐車場として利用できる特例についても、現行の敷地から200メートル以内から、500メートル以内に緩和する。
今回の基準緩和で、事業者は駐車場に割いていた面積を施設の一部として利用できるようになる。景観保護のため、京都市は条例で中心部の建物の高さを規制しており、これまで大型施設の開発を希望する事業者にとって採算がとりにくいとされてきた。
気になるのは、基準緩和の目的です。日経新聞では「大型施設など誘致」とありますが、京都市の中心部には大型施設が建てられるような敷地はほとんど残っておらず、京都駅北東と山ノ内浄水場跡地くらいです。ということは、誘致しようにも既存の建物の建て替えが前提となります。
実はこの基準緩和、自動車の交通量を減らすための物です。地下鉄を始めとする公共交通の利用促進と環境モデル都市の目標クリアのために、京都市は今年春に市駐車施設基本計画を見直し、京都市街の駐車場抑制へと方針転換しました。詳しくは京都新聞の記事「京都市街の駐車場抑制「歩くまち」へ市が方針転換」等をご覧ください。
つまり、今後は駐車場が減るので、乗用車で京都中心部に行くと不便だよ、だから地下鉄乗ろうね、というわけです。ただ、市民の日常生活に大きく関わり、このまま直接市会に提案するのは難しいと思いましたが、やはり市は市民意見(パブリックコメント)を募集するそうです。
京都市のページ「「京都市駐車場条例」改正の素案に関するパブリックコメントの実施について(お知らせ)」によると、11月の1日から月末まで、郵送,FAX,持参又は電子メールで受け付けるそうです。リンク先に図入りの解説PDF資料もあります。
単に渋滞と路駐が増えるだけのような気もしますし、物流や観光地はどうするのかも考える必要がありそうです。京都市の思惑通りにいくでしょうか。
ところで、日経新聞の記事の視点が少しずれているかのような文章になってしまいましたが、逆に日経新聞の通りだとすると、京都市は大型施設を誘致しようと考えているということになります。
既述の通り、新築は可能性が低いのですが、あえて新築で考えると、今計画されているのが、山ノ内浄水場跡地の大学施設と、梅小路公園の水族館です。
山ノ内の方は地下鉄駅すぐなので、5万人増客に向けて無理にでも地下鉄利用を促進したいはずなので強引に駐車場不足に持っていくのもわからなくもないですが、水族館の方は遠方からの観光客もしくは家族づれや足などに障害のある人等、自家用車でなくては困る、という利用者も少なくないはずです。説明会での話では公園の既存台数より増やすという計画でしたが、水族館の敷地ではないのでどうなるでしょうか。
一方、新築に拘らないとすると、京都会館の立て替え(参考ページ「舞台一新、にぎわい再生 京都会館50周年で、市が再整備構想(京都新聞の記事)」「京都会館再整備検討委員会(京都市のページ)」)や国立国際会館の増築(参考ページ「京都国際会館拡張へ観光庁が調査開始(京都新聞の記事)」)も計画されています。おや? いずれも地下鉄の駅から徒歩圏内ですね。これらの計画でも駐車場不足においこんで地下鉄増客を狙うという事でしょうか。
最後は、妄想の域を出ませんが、そう考えると日経新聞の記事もまんざら外れてないような気になります。
それから、このタイミング(?)で京都市は、常設のパークアンドライドを開始するようです。京都市の広報ページ「【地下鉄でPiTaPaを使うと,駐車料金が200円OFF!】 ICカード乗車券「PiTaPa」を活用したパーク&ライドサービスの実施について」によると、このサービスは六地蔵だけのようですが、市内にはパーク&ライド用の駐車場が他にも用意されています。「京都観光パークアンドライド のりかえ駐車場案内(京都市の案内ページ、地図から駐車場を探せます。)」「パークアンドライド駐車場案内携帯版(各駐車場の地図,住所,最寄り駅,開設時間,駐車料金など)」