2011年03月16日

東山に計画されている高級外資ホテルで板挟みの京都市

日経新聞の「フォーシーズンズホテルが京都進出 14年開業目指す」によると、世界的に有名な高級ホテルチェーン、フォーシーズンズホテルアンドリゾートが、京都市東山区にある「東山武田病院」の敷地を賃借して、2014年2月のホテル開業を目指す方針を固めたそうです。

東山武田病院は、以下のGoogle画像の通り東山通に面していて、国立美術館や三十三間堂の近くにあります。 googlemap.jpg Google Mapで見る
ストリートビュー googlestreet.jpg

京都市では、2010年3月に策定した「未来・京都観光振興計画2010+5」にある通り、観光分野において「世界的な知名度の高いホテルの誘致」や「ラグジュアリー層に対する誘致の強化」にも力を入れることにしています。今回のフォーシーズンの計画も大歓迎だと思います。

一方、先ほどの日経の記事の中で気になるのが「敷地の一部は現在、京都市の用途規制によりホテルなどを建設できない。市は外国人観光客を誘致するため、用途規制を外す特例での建設許可を検討するとみられる。」という部分です。

用途規制とは、用途地域による用途の制限と言って、エリアごとに相応しい土地の使われ方を定め、より良い土地の使われ方を誘導する規定です。確認したところ、この敷地は「第一種中高層住居専用地域」「第5種風致地区」であり、第一種中高層住居専用地域は「中高層住宅の良好な住居の環境を保護するための地域」で、ホテル・旅館の建設ができません。 用途地域及び高度の指定 yoto_kodo.gif 景観施策による指定 keikan.gif

日経の記事にある「特例」は、この用途地域を変更し、ホテルを建てられる状況にするということですが、京都市は新景観政策を推進するため、個別の敷地での細かい変更は慎重になっています。不動産業界から異論が出つつも、より良い空間をしっかり整備していくことで、土地や建物の価値を高めようという意図を頑にしています。その前提となるのが、将来にわたって新景観政策の通り建設が進められるということです。お互いに少しずつ譲り合って我慢しあって良い空間が出来るはずが、後からコロコロ変わるというのでは、良い空間は生まれ難くなります。また1回だけなら、と「特例」を一度出してしまうと、その後「特例」が出やすくなります。(参考記事:「京都市景観規制 不動産取引での影響は/京都」毎日新聞)

吉永ゆうき的視点:観光と景観、どちらを優先するのかは難しい所ですが、京大病院、山ノ内、京都会館で特例を出してきた様に、京都市は「特例」を認めることになると思います。そしてズルズルと新景観政策が骨抜きになるか、不動産業界からの反発が強まる様にも思います。

日経新聞の別の記事「京都にフォーシーズンズホテル、不動産投資会社が発表」によると、「旅館風のエントランスを設けるなど、周辺の景観にも配慮したデザインにする。武田病院グループと連携し、宿泊者向けに先端医療や健康診断サービスも提供する方針。医療観光を目的に日本を訪れる外国人客の需要を取り込む。」そうです。



posted by 吉永ゆうき at 14:04 | Comment(0) | 建築・景観
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。