注意:このレポートはあくまで「傍聴メモ的な発言の要約」であり、正式な議事録ではありません。なので一字一句正確な表記が徹底出来ているものではありませんし、発言者の意図通りでない事もありえます。以下をお読みになる前に、このことをご理解ください。つまり、推進側も反対側も、某マスメディアの様な「一部分の文言だけ取り上げる」ことはしないようお願いしたい、ということです。また、正式な議事録いずれ京都市のサイトに掲載される予定です。
2011年11月19日15時から@みやこめっせ地下1階日図デザイン博物館会議室(当日の配布資料)
参考までに、みんなの京都市情報:京都会館のこれまでの経過もご覧ください。
傍聴者は15人。委員の飲み物はペットボトルのお茶。
ちなみに、傍聴の受付は14時45分まででしたが、傍聴席に空きがあったからか、時刻を過ぎてから会場に到着した人も14時55分頃まで受け入れていました。また、傍聴希望者が多いと抽選という事でしたが、抽選は行われていません。
前回の委員会では「前川国男の想いや意図に敬意を持ち、大切に継承したい」「現状の形は変えずに残すべき」「本当に京都に世界を巡回する規模のオペラを誘致するなら、今回の案では舞台の広さが足りず、京都会館全体を建て替える必要がある」「建築は使われてこそ意味がある」「デザインと機能、どっちつかずな物は建ててほしくない」「この委員会を基本計画をそのまま追認する場としたくない」「50年の歴史と言うが、100年のスパンで考えるとより良い京都会館のあり方があると思う」「50年後100年後のイメージを持って進めたい」「京都にどんな舞台が必要なのかの議論が足りてない」というような意見が出ていました。詳しくは、正式な議事録をご参照ください。
ただ、改修計画の具体的な図面等の内容が不明なため、意見をしにくい、とのことで、2回目の委員会に計画の簡単な図面が提出され、それに基づいて意見が交わされることになっていました。
そういった経過があっての第2回目です。前半は高さについて活発に意見が交わされましたが、事務局が次回の委員会に高さについての追加資料を提出するという事で先送りになり、後半はそれ以外の素材や外観についての議論となりました。
前回欠席だった、新国立劇場技術部長の伊藤委員が挨拶。「装置、衣装等の発注を受けて、舞台に入るかどうか等を検討、対応する技術的な部署」とのこと。
委員:裏方から見ると、舞台の間口、奥行き、高さがポイント。最近の演劇では舞台を大きく使うダイナミックな演出が多い。
委員:「多目的」はマイナスに働く事が多い。そのホールの強みを明確に打ち出した上で、第1ホール、第2ホール、小ホール、コンサートホール等を使い分ける事が大事。
委員会について「再整備基本計画に基づき、基本設計をするにあたって、建物の価値を継承する委員会であること」を確認。
委員:建て替えに異論は無いが、フライタワーの27m等の前提条件の精査や再検討が必要。オペラをメインとするのか、等の使い方においても議論が必要。
委員:私も同意。基本計画にもその辺がほとんど触れられていない。
委員:高さも間口も奥行きも、現代のホールならこの数値でなくてはならない、ということはない。演目によって変わる。その場合、現代の演劇を基準に考えるのが現実的。専用のオペラハウスでするオペラを、どうしても京都でやってほしいということであれば、現状の京都会館では(背景等吊るされる)パネルをカットすることになり、オペラの100%を見せる事ができない。高さが足りないので、選定から除外される。専用のオペラハウスは、他の演目がしづらい建物。オペラハウスを狙わずに、他のいろいろな演目が出来ますよという方針も考えられる。奥行きや間口は現状でも足りている。
委員:27mより低い場合、具体的にどのような影響があるか、明確にしてから、先に進むべき。
委員:この場で高さを議論するのか。
事務局:一定の議論がされて基本計画がまとまっている。高さについての補足資料を次回提出する。
委員:我々の役割を明確にしてほしい。次回にその資料がでてくるのなら、現在進められている基本設計に間に合わないのでは?
委員:「基本計画に基づき」というのをどうとらえるか。による。1cmも動かせないのであれば、我々がこの場にいる意味は無い。
委員:「趣旨に基づく」「概念に基づく」と言う事だと思う。
事務局:岡崎ビジョンが大元にあり、その実現に向けて京都会館の方もすすめている。基本計画にある京都会館の使われ方の実現に向けて、前川イズムを盛り込むための委員会だと考えている。
委員:新聞や基本計画の「世界一流のオペラ」という文言が、一人歩きしている。本格的なオペラには国立劇場の舞台ですら足りていない。オペラという文言だけに振り回されず、基本計画全体を読み、基本設計(検討案)の意図を読み取ると、本格的オペラハウスというより地方の公共ホールの規模の計画だと感じられる。4面の舞台がある兵庫芸術劇場や琵琶湖ホールのサイズであって初めて本格的オペラが可能になる。それほど大げさな話ではないはず。
委員:地元としては「本格的なオペラ」という話は聞いていない。本格的なオペラが出来るなら良いが、聞いた話では3面の舞台が必要。京都会館で先日オペラを見たが、舞台装置は簡略化されていた。建て替えにもなるべく妥協点を探って、より良い物にしてほしい。
事務局:世界レベルのオペラが来るかはさておき、いろいろな演目が出来ると考える。地区計画も通っている訳ではないので、現状では仮の案ではあるが、議論を踏まえて出来上がった基本計画だと考える。
委員:基本計画では世界水準のオペラがという話はあるが、必ずしも27mでなければならないという話は無い。
事務局:景観の価値を継承するのに、27mでは出来なくて24mならできるということがあるのか。原則は27mでお願いしたい。
委員:キャパ2000人なら狙いはオペラ、バレエ、大型ミュージカルが狙いどころだと考える。
事務局:基本計画で舞台内の高さを検討した経緯があり、基本計画では27m程度という案でまとめられている。
委員:こういう議論していては、設計を先に進められないのではないか。早く結論を出していくべき。
委員:高さという委員会の外で決まった事についてここで議論していては、前に進めないので、高さについては事務局から次回追加資料が提出されるという事で保留にして、本日の会議を先に進めたい。事務局から資料説明を。
事務局から他ホール及び現状の京都会館第1ホールと計画案ホールの舞台の断面及び平面の比較表、検討中の基本設計案の平面、断面、立面、各図面、外観模型の説明がされる。
設計者:既存の制約の中で最高の物を作るという考えの元、31mという高さ制限とした場合の、一番のバランスをとった形と考える。建て替えの部分と、改修のみで残す部分が有り、現行法規に則って構造的に成り立つようにとするだけで複雑な作業を必要とする。(その困難さは理解出来るというように建築関係の委員がうなずく)
事務局:既存部分は耐震改心促進法に基づく改修になる。
委員:50年先、100年先に、「もうちょっと高く作っておいてもらえたらなあ」ということにならないようにしてもらいたい。これから先、オペラに限らずどういった舞台芸術がでるかは分からないので、より良い物をお願いしたい。
以降、高さの部分以外について、意見が交わされた。
委員:壁面は、一度撤去してから新しく建て替えるのか、現況の壁面を保存、維持したまま建て替えるのか?>出来るだけ、今ある物を残したいが、庇のあたりのコンクリートの腐食も進行しているので、現行法規に照らし合わせた上で構造等を検討してからの判断になる。現時点でどうなるかは回答できない。
吉永ゆうき的視点:外壁を残したままの建て替えのわかりやすい事例が、烏丸三条の新風館です。逆に寺社建築等の古い木造建築では、痛んだ部分を新しい材料を使い建設時の建て方を踏襲して建て替えられる事が多々あります。つまり、建て替えの結果、その部分の建設当初の材料は残らないのですが、その手法や使われ方は残るという訳です。有名なところでは伊勢神宮や法隆寺の五重塔がわかりやすいでしょう。京都会館を含む前川建築の特徴の一つとして素材の使い方があげられます。その「価値」をどの様に継承し「残す」のか、今後の委員会での議論に注目したいと思います。
委員:美術館別館との境にある段差は現状のままか?第1ホールホワイエの1階内側からは、圧迫感がある。>なんとかしたいし、排気塔も取り除きたいが、その部分は検討中。
委員:中庭に面するテラス部分を共通ロビーにする事が、中庭に対する建物価値についての大きなポイントだ。現状ホワイエが狭いので理解は出来る。>フェスティバルや会議等では、複数の会場を使いながらロビーでも展示をする事が一般的。雨天の場合、現状の中庭で展示するわけにはいかないので、共通ロビーとして、広さを確保する案にした。
委員:前川建築の素材の使い方として、ガラスはあり得ない。既存の建物を残す時のガラスで覆うという考え方はアリだと考える。>敬意を表するが、全く真似をするのは前川先生に対する侮辱だと考える。現時点でのあるべき形を出したい。
委員:同じ物を作るのが継承だとは思わない。そこには新しさがなくてはいけない。ただ、元の価値を減じる物であってはならない。
委員:内装はどの程度改修されるのか。>現行法に沿うため、木の部分は変えざるを得ない。それ以外の部分はコストもふまえて検討する。
委員:疎水側の大庇は必要なのか。
委員:この建築の大きなポイントの一つなので、外せない部分だろう。木の内装を変えるとホールの残響や音響が変わるという理由で、改修の際に残す例はある。「音響を変えない事が、そのホールを残すという事」という考え方もある。
委員:搬入口がよく考えられていて、導線もクリアになっていると感じる。
委員:MICE機能としては不十分ではないか。また、建て替える部分は新しくより使いやすいものであるべきだと思うが、残す部分まであれもこれもと付け加えるのはいかがな物かと思う。
委員:使う側が必要に応じて屋根をつけたりすることもある。それよりは、前もって専門家のデザインで機能を付けてほしい。
委員:エントランスの位置等、必ずしも基本計画B案が守られていない。高さ等の数字が守られていればそれでいいのか?>使われ方の部分がかえられない事が大事。
委員:疎水側の庇の話がでていたが、川端通から二条通を進んで来た場合、疎水側が京都会館の正面となる。単なる作業場所とすべきではない。
ここで時間となり、委員会終了。次回は1月中旬の予定。
吉永ゆうき的視点:京都市の新景観政策がスタートしてから、まず京大病院が高さ規制の特例となり、今回の京都会館、そして山ノ内浄水場跡地も、特例として高さ規制の緩和が進められています。新景観政策は、50年後、100年後の京都のためにということで、建築業界・不動産業界の強い反発を押さえ込んでの施行となりました。しかし作った側の市行政が施行後5年も経たないうちに、複数の特例を認めると、新景観政策は何だったのかということになりかねません。一方、京大病院は「公共福祉」、京都会館は「ホール機能の実用性の維持」、山ノ内浄水場跡地は「より魅力的な跡地活用案の呼び込むための跡地価値の向上」と、建前かはともかく相応の根拠はあります。推進する側が、特例にするだけの価値があるのだと説明責任を果たせるか、がポイントだと思います。また、山ノ内浄水場跡地は、高さ規制を緩和せずとも、立地及び現状の建築に大きな魅力があり、むしろそれを活かせないような案では応募を受理するに値しないと考えます。