2013年02月01日

京都市防災会議専門委員会地震部会のレポート

2013年1月31日10時〜@職員会館かもがわ会議室

京都市には、京都市の防災に関する基本方針や地域防災計画の作成等を行う、京都市の付属機関として「京都市防災会議」が設置されています。

本日の会議は、その防災会議の中でも各分野の専門的な事を検討とかする「専門会議」、その中に本年度設置された「地震を担当する部会」です。

京都市の防災に関する最近の防災の流れと出来事を簡単に紹介すると、まず、東日本大震災を受けて、国の地震防災方針と想定が変更されました。端的に言うと「可能性の高い地震だけでなく、可能性のある最大の地震も想定に含めよう」ということです。つまり防災の計画のベースとなる地震の規模がこれまでよりも大きくなっています。

一方、京都市の動きとしては、原子力発電所の災害対策の計画を作成中(2月13日まで「京都市地域防災計画 原子力災害対策編」(骨子)についての市民意見募集中です!)。避難などの事前対策が求められるUPZ(緊急防護措置区域)を、これまでの左京区北部(久多・広河原)に加えて右京区北部(京北上弓削町)まで拡大しました。

また、京都市避難所運営マニュアルが10月に策定されたので、409の各避難所運営マニュアルを作成中。他に、企業や福祉施設と、災害時の協力についての提携を進めています。

それから、今年の3月11日には、緊急速報メールを使用した訓練も予定しています。少し前に大阪府で実施されたものと同様の、決まった時間に一斉に緊急速報メールが届くという訓練です。

そして、大企業や工場、大型集客施設、観光地などの帰宅困難者対策も進められています。

しかし、木造建築物の耐震診断及び改修は思った様に進んでいないようです。

危機管理監のあいさつの後、「国の想定に対しての京都市の対応」という議題でスタートです。この会議はわりとフランクに、遠慮せず、かつ冷静に意見が交わされるので、傍聴していて楽しいだけでなく、とても勉強になります。

要約1:今回の国の想定は、理学的に考えうる最大の揺れを出してみた、というもの。京都市での揺れは、市周辺の断層による直下型地震(最大震度7)よりは、震度が小さい(最大震度6強)。だから断層型直下地震の対策を早急に進めるべき。

要約2:ただし、南海地震の揺れが数分にわたる場合は、市南部(伏見区南区南部)が液状化する恐れがあるので、その対策は必要。

要約3:また、和歌山や三重等他府県や京都府南部の被害の大きな自治体への物資や救助が優先されるかもしれず、京都府内、京都市内で物資や人員のやりくりが出来る様に準備が必要で、さらには、京都市へ避難してくる場合の受け入れや、被害の大きな自治体への派遣も想定して準備が必要。

要約4:想定の数字に踊らされずに、公や民間の事業継続が可能な防災を目指して、自分の資産に対するインパクトがどの程度なのかを、それぞれが把握すべき。

要約5:マスコミは政府や研究者から出された数字をそのまま報じるのではなく、その発表の背景や意図をきちんと判断して(勉強して理解して)報道すべき。一方研究者側も、上からマスコミの考え方や報道内容を批判せずに、マスコミも研究者もお互いの考え方・立場を理解して、一緒に考えましょうという関わり方が大事。

要約6:3月18日に本年度第2回の京都市防災会議を開催予定。議題は地域防災計画、及び同原子力対策編の検討。

ここまでで、今回の内容はほぼ網羅したので、会議の雰囲気を知りたいとかでなければ、以下は不要であろう。以下、主な発言。一字一句委員に確認した訳ではなく、主観的に要約したので、誤解のなきよう。もちろん文責は吉永ゆうきにある。なお、事務局によると正式な摘録はWEBサイトで公開するかどうかも含めて検討中との事。

吉永ゆうき的視点:今回の会議では、京都市が国や府の想定にどう向き合うべきか、非常に明確に、また必要な部分が漏らさず述べられていた様に感じた。市にはスピード感を持った対応を期待したい。また、広域災害時の京都市の対応のあり方を考えさせられる発言も興味深かった。

委員:今回の国の想定は、先にマスメディアがM9.1という数値を作り、政府がそれに追随した感がある。

委員:同意だ。地震専門家の敗北の代償行為ともとれる。今回の想定で大事なのは、どんな事があっても被害の無い機能を明確にすること。また、被災地の住民の行動如何では、32万人の死者想定が6万人まで減らせる事もわかった。

委員:専門家の実際の考えを聞きたいというのが今日の事務局の目的だと思うので、自由に発言してほしい。

委員:研究者は上からマスコミの考え方や報道内容を批判せずに、マスコミも研究者もお互いの考え方・立場を理解して、一緒に考えましょうという関わり方が大事。

委員:細かい数字の違いよりも、万単位の死者が出る可能性があるという事実を伝えてもらう事が大切。

委員:京都市は今後の対策において、基本ケースか陸側ケースかを迷っているのでは?(事務局うなずく)

委員:南海地震の震度は気にする事は無い。直下型地震の方が被害が大きい(注:震度7想定らしいです)ので、そちらの対策をすれば南海地震の対策には十分。ただし市南部は液状化の可能性があるので、震度よりも長時間(注:1〜3分)の揺れによる液状化を想定しておくべき。

委員:最初に想定外と言ったのは中央防災会議のあべさん。中央防災会議の想定が想定していなかったのは事実。原子力行政が絡んで、あのあたりでは起きないということになっていた。そうではなくて、理学で考えられる揺れを遠慮せずに出してみましょう、京も活用しよう、で出てきたのが今回の想定。高い波の起きたメカニズムはまだ論争中。中央防災会議の「次にこれが起きるとは言っていない」「揺れを感じたら一人一人が避難行動しましょう」という説明も資料に付けるべきだった。京都市内では関係ないが、市民がそのエリアに旅行等で行く事もありうる。そのために伝えることが大事。

委員:今まであまり議論されていないことがある。南海地震の後、京都市の活断層が誘発される可能性があるかどうかは、研究がきちんとできていない。1946年の南海地震と1948年の福井地震がモデル。

委員:東日本大震災の直後に長野県で大きな地震があったが、国の対応がほぼ全て東日本の方に行った。南海トラフの後に京都市を含む震災があった場合に、同じ様な状況になるかもしれない。

委員:想定を見直すよりも、事業継続が可能な防災を目指してほしい。数字に踊らされずに、自分の資産に対するインパクトがどの程度なのかを明確にすべき。

委員:かつての巨椋池は液状化する(注:向島のあたりだそうです)

委員:長く揺れるという事がポイント。お墓なんかは全滅。

委員:被害想定を市民に出すなら、地震の揺れの想定と、死傷者や倒壊の被害想定の信頼度は違うということは、市民にも伝えるべき。

事務局:(2分ほど退室していたため、一部記録できず)……事業継続出来る様に取り組む。被害想定には幅がある事も理解したので、市民に間違ったメッセージが伝わらない様に注意したい。超広域災害の場合の備蓄も検討したい。(注:より被害の大きい地域に物資人員が集中するので、京都市内・府内でなんとかする&被害の大きいエリアへ人員を派遣する場合も想定。京都に避難してくる場合もある。)

委員:どれくらい受け入れられる余地があるか?>事務局:市営住宅、宿泊施設の活用が必要。

委員:対策するかは別にして、1000年に一度のケースを想定するのか。>事務局:花折断層をベースに対策をとっている。

委員:事務局職員の自宅は耐震診断しているか?>事務局:新基準に基づいた設計なのでしていない。市長の自宅は耐震改修したと聞いている。

委員:避難所運営マニュアルは地域の幹部向けに作られているが、「3つの管理が大切」「その他配慮が必要なこと」は、幹部だけでなく、老若男女言語を問わず理解できる様に、「やさしい日本語」で読める様にしてほしい。

posted by 吉永ゆうき at 02:28 | Comment(0) | 傍聴レポート
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