今回のレポートの事の発端は、2013年03月23日付京都新聞の「円山公園、花見用ブルーシート禁止 京都市景観考慮」(魚拓)という記事。
京都市が円山公園において、2013年3月の「25日朝から一部区域のシート使用を禁止」する代わりに、一畳敷きのゴザ3千枚を「無償で貸し出す」上に、「ゴザの持ち込み」も許可。一方「前日からの場所取りは認めない」とのこと。4月15日まで。
ところがその記事の3日後の26日に、同じく京都新聞から「周知不足、指摘の声も 円山公園で花見用ブルーシート禁止始まる」(魚拓)という記事が出た。
予定通り25日から職員の見回りとブルーシートからゴザへの交換の呼びかけが行われたが、花見客の一部からは「事前のPRがない。前日からの場所取りが駄目なら、当日朝は何時から認めるのか場所取りの明確な基準が必要だし、きちんと伝えてほしい」という声も出たのだ。
ここまで読んで気になったのが以下の点。
- ブルーシート禁止エリアの範囲
- ゴザの貸し出しのシステム&ゴザ管理
- 市の周知広報
ということで、実際に円山公園に行って、確かめてみる事にした。
この図の赤い部分がブルーシート禁止エリア。黄色は調査時にゴザが敷かれていた部分。同じく青がブルーシート。Cのエリアにゴザもブルーシートも無いのは、柵で囲まれているから。日中は近くの店が有料席を設けるようだ。Bの場所には仮設トイレが在るので、当然その周辺も空いていた。ゴザ置場は2カ所。そこからAまで150mくらいか。図の左の方角に八坂神社および祇園や鴨川がある。
また、ゴザの使用については、2カ所あるゴザ置場から必要に応じて各自持ち出すだけで、事前の予約とかレンタル料とかは必要無い。
2013年3月30日の調査の様子を以下に記す。
調査にあたって、どの様にゴザに占有されていくかを見てみたい。ということで、4:55河原町着の始発に乗った。ちなみに京阪本線はこの時点で祇園四条駅に到着していない。これだけ早いのだから、円山公園の花見客は居ても、まだわずかだろうという根拠の無い予想をたてる。
河原町に到着。乗ってきた電車は折り返し梅田行きになる。
地上に出ても、四条大橋も流石にまだ真っ暗で、祇園も閑散としている。
八坂神社を通り抜けると大きな桜が見えてくる。
有名な円山公園の枝垂桜と言えばこれ。月見&夜桜もなかなか。
で、肝心の花見客とゴザの状況はと言うと、
ゴザだらけ。
よくよく考えれば前日は金曜日なのだから花見も盛大に行われて当然だった。目の前に広がるのは、その名残か。その事に思い当たらず、まばらな人とゴザを勝手に想像していたが、まばらなのは花見客だけで、予想はあっけなく外れた。
人の居ないゴザは、前夜に花見をした集団が使用したゴザをそのまま放置して帰ってしまったのだろう。鮮やかなブルーのシートではない分、マイルドにはなったが、これはこれで興ざめのする光景。
引き続き調査を進めるため、円山公園の更に奥へ進んでみた。
ここのエリアは右には大量のゴザ。そして左の方には、無いと思っていたブルーシートが。この時点では、まだここが禁止エリア外だとは知らなかったのだ。
近寄ってみると、花見のグッズと場所取りさんらしき寝袋の固まりがモゾモゾ。
近くの別のブルーシートには、置き手紙が。14時半までは使わせてもらってもいいのかな?
うろうろしていると、こんな看板があった。ロープの中立ち入り禁止と、ブルーシート等使用禁止が書いてある。ブルーシート等の「等」ってどこまで含まれるのだろうか。後からわかったが、ここがブルーシート禁止エリア。別に柵で囲まれている訳ではないので、どこからでも入れるが、入りやすそうな場所には、同じ看板が設置されていた。
近くには、茶色い板の壁と半透明の樹脂の屋根でできたゴザ置場が2カ所あった。
ゴザ置場のインフォメーション。「必要な方は、このゴザを使用してください。使用後は必ずこの場所へ返却してください。」とある。
これがそのゴザ置場の周辺。
もう少し歩き回ると、藤棚のコーナーがあったが、その下は大きな長方形のエリアにゴザが敷き詰められていた。
藤棚の周辺にはビニール紐による境界まであった。
気づけば空はかなり明るくなっていた。30分ほど公園内を探索していたらしい。
四条通に降りてみるとバス等も走り始めていて、街が動き出したよう。
朝食を済ませて再び円山公園の方へ向かうと、四条大橋が輝いていた。いかにも「朝」な空気。時刻は6時半を回っている。
公園に戻ると年配の二人組がブルーシートを広げようとしていた。そこへ自転車で通りがかった、更に一回り年を重ねたくらいの男性が「ここはブルーシートはあかんで。あっちからゴザを持ってきて敷いたらいい。」と注意していた。年配の二人組は結局150m先のゴザ置場からわざわざゴザを運んできていた。
5時台に通ったときには気づかなかったが、ゴザたちの間に、ブルーシートの直方体が4つ、置かれていた。どこの花見客がこんな大きな荷物を置きっぱなしにしているのだと不思議に思ったが、
小道を挟んだ向かいの店舗の備品がしまってあるらしく、店名と同じ文字がブルーシートにも大きく書かれていた。写真の矢印の先が店舗。
ゴザの上を伸びる影の先を見ると、
これまた気づかなかった黄色いテントがあった。本格的に花見 or 場所取りをしているのかと面白く見ていたら、年配の男性がタバコをくわえながら近寄り、「ここはテントはあかん。ブルーシートもダメで、ゴザを敷きなさい。」とテントの横に居た学生らしき若者に注意していた。よくよく見ると、先ほど年配の二人組に注意していたおじさんだ。この辺りの主なのだろうか。ただ、私の真後ろにある看板には「テント禁止」と併せて「火気厳禁」も書かれていたのだが、おじさんのタバコは電子タバコだったのだろうか。
若者たちはおとなしくテントをたたんでいた。ちなみに先ほどの年配の二人組がブルーシートを広げようとしていたのは、実は禁止エリア外。図のAの辺り。いろいろと考えさせられる。
しばらくすると、近くに報道用のテレビカメラを構えている人が居た。何を撮っているのかと野次馬根性丸出しで近寄っていくと、(公園の?)警備員さんがゴミを拾っていた。近くに分別用の大きなゴミ箱があるのに、なぜゴミが落ちているのか? もちろん、マナー&モラルの問題が大きいのだろうが、他にもあるのかもしれない。この答えは後でわかった。
ちなみに、撮影しているのは読売テレビのクルーだ。聞いてみると夕方の情報番組tenで放送する素材撮りらしい。眠そうな若者たちのグループのほとんどにも、ゴザの事等をインタビューしていた。
9時半頃に作業服の一団が現れた。公園を管理している「京都市建設局水と緑環境部南部みどり管理事務所」の職員さんたちだ。
使用後に地面に放置されたままのゴザを丸めて、ゴザ置場へ戻す作業をしている。読売テレビのクルーたちも、すぐにその様子を撮影していた。まばらにいる若者たちに、「これは使ってる?」「使ってるのはここまで?」等確認しながら手早く回収していた。
また、読売テレビは職員さんにもインタビューしていた。以下、そのメモ。
- ブルー使徒の禁止の目的は?
- 桜の保護と景観
- 施策を始めてみてどうか?
- 今のところトラブルは無い
- 場所取りは?
- 人が居てくれないと。ただ、何日も場所取りをするのは、その人の公園ではないのだから。イタチごっこではあるが。
撮影の邪魔をしない様に、なるべく離れていたのだが、一部聞き取れなかったので、問答が正確かどうかは保証しかねる。インタビューの後、私もマネをして職員さんのお一人に少し質問してみた。
- ゴザ置場は2カ所のみ?
- そう
- 公園の奥の方の人は、わざわざここから持っていくしか無いのか?
- 奥の方はブルーシート禁止ではない。今回はあくまで試行でエリアは一部のみ。ゴザの必要枚数や管理運用の確認のため。
- エリア外の人には?
- エリア外は禁止ではないので、ブルーシートを敷いている人に特に何か言う事はないが、エリア内の様子(ゴザだらけ)を見て、進んでゴザを利用していくれているようだ
- 今回の施策の周知は?
- この一部エリアのみブルーシート禁止という事で、エリアに入る人にはわかるように看板を設置している。他に京都新聞でも。ツイッターでも情報が広まったらしい。
- ゴザが放置されているのは自分の物という意識が起きないからでは?
- 元々ブルーシートでも使用後の放置はそれなりにあった。ゴザだからというわけではない。雨でゴザが濡れた場合の対策等も含め、今回の中で確認していく。
お忙しい中、お答えいただき、ありがとうございました。ここで再び、当初の疑問を確認しよう。
- ブルーシート禁止エリアの範囲
- ゴザの貸し出しのシステム&ゴザ管理
- 市の周知広報
その1。繰り返しになるが禁止範囲は図の赤い部分。早朝から徐々にゴザで埋まっていく様子を見たかったが、埋まっていくというより早朝には既に埋まってた。おそらくは最初に放置した人のゴザを見て、後から来た人が、そのままにしておいて良いのだと判断してしまったのだろう。あとはその連鎖。
その2。ゴザ置場から必要の応じて各自持ち出す。職員が随時見回る。事前の予約とかレンタル料とかは必要無い。使用後は戻しましょう。
その3。現場の看板。あとは京都新聞くらいか。後で確認したら、26日の記事がYahoo!ニュースでも掲載された上に、ブログで言及している人もそれなりに居た。エリアを明記する様な物は特にない。
吉永ゆうき的視点:観光客向けの「京都観光Navi」内の円山公園紹介ページその1(魚拓)、その2(魚拓)、そして京都市情報館のページその1(魚拓)、その2(魚拓)には、せめて一言「円山公園の一部でブルーシートの利用と前日からの場所取りを禁止しています」等のアナウンスが欲しい。特に京都観光Naviの方は、現在上記の2ページがアクセスランキングの2位と3位なので、早急に。遠方からわざわざシートを用意した上で来た人だと、現地に着いてからの徒労感がはんぱなさそう。
吉永ゆうき的視点:ぱっと見の雰囲気はだいぶ改善されたと思うが、まだまだブルーシートは写り込んでしまう。みなまで書くと、花見客以外にもブルーシートは公園内に散見する。言いにくいのは知っているが、露店のブルーシートも禁止してはどうか?ということ。
そんなこんなで、夜明け前から9時台まで、5時間近くの円山公園調査終了。
のつもりだったが、それだけで終わらず、続けて後編。
朝方のゴザの広がる空間が夜はどうなっているのかと気になり、日中の用事が終わってから、再び円山公園へ。河原町駅到着は日が変わって31日0時5分。終電は0時47分。駅ホームから円山公園まで早歩きで10分。公園滞在は最大でも22分。ギリギリだけど好奇心が勝り調査決行。
朝にゴザだけだったブルーシート禁止エリアは、この時間でもぎっしりの人でにぎわっていた。
一方、奥のエリアは知らない人も居るのかゴザだけ地帯もそれなりの面積にわたっていた。
ゴザ置場もカラに近い。
トイレ前にも朝には無かったゴザが!
一方、ここには朝に在ったゴザが無くなっていた。
藤棚のコーナーは、ブルーシートの上にゴザを敷いていたのか。エリア外なのでカモフラージュの必要は無く、おそらくは重ねた方が暖かいからか?
ちなみに、手前がブルーシート禁止エリア。無骨なバリケードの奥は、席料が発生する有料エリア。
ゴミ箱に収まりきれない量のゴミが道に溢れていた。この写真で調査報告は終了。
コメントをありがとうございます。町並みにしても「木を見て森を見ず」なことがあるかもしれませんね。京都市においても、建築物や広告看板について、行政がようやく重い腰をあげて全体的な美観について取り組み始めた所ですので、今後の変化を見守っていただければと思います。